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宗教とビジネスの融合には、共通課題を探す必要がある

宿坊創生プロジェクトで作っている宿坊第一弾。大阪・下寺町の宿坊和空邸(仮称)建設が始まりました。

宿坊和空邸新築工事

現在は着々と工事が進んでいます。

宿坊和空邸建設中

さて、この写真を見て、皆様はどんなことを感じられるでしょうか? 私は期待半分、不安半分です。

まだ途中なので全容はつかめませんが、はたして見ただけですぐに「これこそ宿坊だ」と思われるものになるでしょうか? たぶんそんなことはないでしょう。

何よりもまず、鉄筋造りの現代建築。古くからある木造の建物で寝泊まりできると考える人には、「あれ?」と思われる可能性が高いです。

またこれまで他でも境内の外に飛び地として建てられた宿坊はありましたが、今回の宿坊和空邸もお寺から通り一つ離れた場所に建設されています。

正直に言って現行の旅館業法には、かなり大きな縛りがあります。特に古くからある木造の建物をリノベーションして宿泊できるようにと考えると、古建築としての価値を大きく損ねなければならないほどの改築を要求されることもあります(例えば壁を壊して排煙用の窓を取り付けたりなど)。

宿坊創生プロジェクトも始まったばかりですし、まずは様々な規制をクリアするために従来の工法による新規建築というスタートは、致し方ない部分です。

もちろん味気ない外観で終わるつもりはないですし、この和空邸のプロジェクトチームではできる限りお寺を感じるデザイン案も議論が進められています。

木造建築による宿坊はまだまだ先が長い

それでほーりーが予想しているのは、たぶんこの宿坊和空邸がオープンした時、バブルを未だに引きずったお金はどこからか振ってくる論者な人たちが「単なる金儲けの施設じゃん」って、言うだろうなということです。

そんな人たちは以下の記事でも読んどいてと思いますが、まあ読まないでしょう。

○○でお金を稼ぐなんてけしからんという思想が文化を潰す

が、一方で宗教とビジネスに綱引きの部分がないかと言えば、そんなことはありません。今回で言えばお寺にもとからある木造建築を宿泊施設として用いないのは、このビジネス論理(あるいは旅館業法という行政論理)が先行したものです。

なので私はいずれ条件が整ってきたら、既存の木造建築をリノベーションした宿坊も目指すべきと考えています。

幸いなことに民泊普及や空き家活用は政治世界で盛んに議論されていますし、今後の規制緩和だって見込めない分野ではありません。

また、木材自体の耐火・耐震技術は飛躍的に向上しており、規模の大きな木造建築もどんどん許可され始めてきています。

全国寺社観光協会とも話していましたが、宿坊がより価値を発揮するためにもさらなる行政への働きかけは必要でしょうし、将来を見据えた宿坊のデザインにはまだまだ考える余地があります。

宗教とビジネスの融合には、共通課題を探す必要がある

とは言え、先の話は先の話として、直近で進めなければならないこともあります。そこで私がこの和空プロジェクトに関わる方(全国寺社観光協会や建築会社、宿泊運営会社の方など)にお話させて頂いたのが、『宿坊の宗教性を高める50の提案』です。

宿坊の宗教性を高める50の提案

ちなみに50の提案と言いながら、中身は77項目ありました(一つの提案に複数の案が入っているものもあり、全部足したら100個以上)。

建築自体はまだまだハードルが高いので、内部のデザインやソフト面で宗教性を高めていこうという作戦です。

ここでは人はどういう場所を聖域と感じるか、どんなことを行えば仏教や神道との接点になるか、座禅や写経、精進料理を深掘りした価値の向上策、現在寺社で行われている様々な修行体験やワークショップなど、多方面に及んで話をしています。

そして私が一番最後に語ったのは、「宿坊が宿坊足るための指標」というお話です。

宿坊指標

ここで紹介した3つの指標。「お勤めの参加率」は別として、「施設の破損率」「食糧の廃棄率」はあえてビジネス課題に真正面から取り組むものにしています。

宗教性を高めることによって、私は宿泊者から施設が大切に扱われると考えています。実際に幾つかの宿坊や先日宿泊したキリスト教会の宿の方から、似たような話も聞いてきました。また食事を残さない、働く人からもなるべく無駄を出さない意識が芽生えることは、ビジネス観点から考えても大きなメリットです。

もちろん、施設の維持コスト、食料の廃棄コストを下げることを第一優先にしては本末転倒ですが、宗教性を高めた結果としてこうした効果が得られるのなら、それは大いに歓迎すべきです。下がったコストはその分、さらに宗教性を高めるための投資に回すことも可能です。

そしてここで私が言いたいことは、宗教とビジネスの綱引きを減らすためには、できるだけ両者に共通した課題を考えて設定する必要があるということです。

宿坊創生プロジェクトに顧問としてほーりーがジョイントしている理由の半分は、ここにあるとすら思っています。

宗教性が高まれば、ビジネスサイドの収益が増す。ビジネスとして上手く回れば、宗教の布教にも大きくつながる。「宗教にビジネスを組み込み、ビジネスに宗教を組み込む」と私は言っていますが、この組み立てを考えることが、両者の融合(寺社ビズ)には絶対必須でしょう。

宿坊創生プロジェクトはそのための革命的な取り組みです。もちろん険しい道ですし、言うは易しで両者にとって様々な妥協が迫られる場面は当然出てきます。しかしお互いがお互いの推進力になる方向は、知恵を絞って作り上げるべきですし、それが結局は宿坊が普及するかどうかの鍵にもなっていくでしょう。

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宿坊の宗教性を高める50の提案

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