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住職の奥さんがお寺の仕事をしたがらないという相談に答えた話

ほーりーはお寺の情報誌『月刊住職』で、お寺の活性化策を述べた連載を受け持っています。それで去年末から寺庭婦人さんの研修会で講演した「お寺の奥さんの5つのアクション」を順番に紹介中です。

月刊住職・お寺の奥さんの5つのアクション

また、以前にお坊さん&お坊さんと出会いたい女性の寺社コン特別バージョンを東京・京都・愛知で開催しました。実際にそこでは結婚したカップルも生まれています。そして来月も浄土宗近畿地方教化センターが主催するお坊さんの出会いイベントにて、ほーりーがコーディネーターを務めます。

(ちなみに今回は浄土宗の僧侶限定ですが、現在参加者募集中ですのでご興味あれば「第一回寺コン(婚活パーティー)」をご覧ください。女性はすでに応募多数でお申し込みストップしています)

そんなあれこれが影響したかは分かりませんが、先日とあるお寺の住職のお姉さんから、「住職の奥さんがお寺の仕事をしたがらない」という相談を頂きました。このお姉さんは海外に住んでいることもあり、外からお寺を見ながらやきもきしているそうです。

似たような話はあちこちでよく聞きますし、今回はこの方に回答したことを(お寺が特定されない範囲で)まとめてみました。

愛ではお寺をサポートできない

この住職の奥さんは、もともと結婚当初からお寺に入ることには消極的だったそうです。詳しい経緯は聞いていませんが、好きになった相手がたまたまお坊さんだったというパターンでしょうか。

が、家族としてはそのうち積極的になってくれるだろうと期待していたものの、何年経っても変わらずとのこと。「弟を愛しているのであればサポートしてもよいのではないか」と仰られていました。

うーん。ほーりーも株式会社寺社旅を作って、うちの妻に様々な仕事をお願いしています。こうしたお話を聞くとそのありがたさを痛感してしまいますが、それが当たり前になってはいけないわけですよね。

私の回答としては

「弟を愛しているのであればサポートを」というのは正論ではあるかもしれませんが、仏教やお寺は心の根幹にもライフプランにも関わりますし、ご本人としたら簡単に(あるいは一生)割り切れるものではないでしょう。

というものです。

全く逆の立場から発言したら「妻を愛しているのであれば、旦那がサポートを」になるわけですし。

実際に私も『お寺の奥さんの5つのアクション』を作るにあたって、いろんな方からお話を伺いました。

○結婚したらいきなり何冊も仏教書を手渡され、「ええぇ~っ!」と、気が重くなった
○法要で大勢がお経を唱える場面を見て、「なにこれ、宗教みたいで怖い」とつぶやき、「いや、宗教だから」と突っ込まれた
○旦那さん(=僧侶)は子供のころから出家するかで迷っていたのに、自分は結婚した翌日から仏教徒であることが求められた

なんて方もいます。

お坊さんとの婚活イベントで私は参加された女性によく言っているのですが、お坊さんと結婚することは普通のサラリーマンと結婚するより、超えるべきハードルが一つ増えます。

相手を好きになることはもちろん、お寺の環境もひっくるめて好きになれないと、続けることは難しいわけです。なのでお坊さんとの婚活イベントではお寺生活の実情を、女性の前で真剣に語ることを重視しています。

お寺の奥さんが抵抗を感じること

今回のご相談に限らず、お坊さんと結婚したもののお寺(あるいは仏教)には消極的という方の抵抗を感じる部分を聞くと

○宗教に悪いイメージがある
○仏教や作法など、学びを強要されることが嫌だ
○檀家さんとのお付き合いが苦手
○お寺に入って親世代と同居したくない
○お寺の外でやりたいことがある

というものがあります。また他にも、

○跡継ぎの期待とプレッシャー
○旅行に行くことができない
○重要な役割は任されない

などという不満を漏らされた方もいました。

これらのどれかだったり、あるいは複合的だったり、さらにはそれを周り(住職や家族、檀家さんなど)から期待されるうちに感情的にももつれてしまったりというのはよくある話です。

こうした場合に「お寺に入ったからにはこうあるべき」と、有形無形で周りがプレッシャーをかけても、よけいに頑なになりやすくなります。

「寺庭婦人」「坊守」「お庫裏(=お坊さんが住む建物)」「大黒(=台所の神様)」など、宗派や地域によってお寺の奥さんを指す言葉はいろいろありますが、そのどれもに共通しているのはお寺の内部にあるものから取られていることです。

『お寺の奥さんの5つのアクション』も本当はものすごくタイトル考えたのですが、結局「奥さん」に落ち着いてしまいましたし。

男性の論理の強いお寺では、女性の役割やイメージを変えることは容易ではありません。ですがそろそろ従来の奥さん像以外の多様な役割を、それぞれの立場が痛みを伴う覚悟も持ちながら作り上げていくことは大切かなと思います。

これからお寺の奥さんに活躍してほしい領域

ほーりー的に一押しなのは、お寺の女性がもっと人前に出ることです。お寺に来る方の応対を続けるうちに涅槃図の絵解きのスペシャリストになり、あちこちのお寺に呼ばれている長野・長谷寺の岡澤恭子さんとかは象徴的ですが。

長野・長谷寺の絵解き講演(岡澤恭子さん)

またインターネット上での女性視点からの情報発信も強い力になります。

facebookやTwitterなどのSNSでは同じような投稿を続けていても、男性と女性でフォロワー増加数に1.5~2倍以上の差が出ることはよくある話です。

飲食店や病院などでは、メニューや治療内容の他に、店員やスタッフの顔写真を載せることで信頼感を上げる方法もよく使われています。

各種メディアが「○○女子」「××ガール」を連呼するもの、男女の反響差を知り尽くしているからです。

寺庭婦人のブログやSNSのアカウントを開設しているお寺もありますが、まだまだごく少数です。こうしたものがもっと増えたら、お寺の奥さんへのイメージも変わってきます。

ということで、、、

男の理論が強すぎる社会は逆説的ですが、女性の感性の活かしどころが多く残されているとも言えます。実際に私が顧問を務める霊園会社・アンカレッジでも「男性に嫌われても良いので、女性に好まれるお墓」を開発したことで飛躍を遂げました。

男性に嫌われてでも女性に選ばれる、樹木葬のヒットの秘密

サポート役が得意なお寺の奥さんは、引き続き裏方に徹するのもありでしょう。ですが一律で「お寺に嫁いだからにはこうあるべし」だけでは、納得されない時代です。

実際に相談のあった住職の奥さんも、檀家さんや寺族の集まりなど人と関わる部分は意外と積極的なようです。ただお寺の行事や事務作業、清掃などは苦手なようでした。

もしも裏方の役割をお寺の奥さんが手放すとしたら、代わりに誰がやるのという問題も発生します。お坊さんがやるのか、檀家さんがやるのか、コミュニティを作っていろんな人に少しずつ任せるのか、ルンバがやるのか。

全員が一度に納得できる魔法の解決策はありませんが、それでも決まった立場に一方的に押し付ける手法は通用しなくなるでしょう。もちろんお寺の奥さんを自由気ままにすべしなんて極端な話ではありませんが、関係者がそれぞれ応分に覚悟を持ち、時にはゼロベースで話し合うことも必要かもしれません。

そうでないとお坊さん婚活は今は女性に人気であっという間に定員を超えますが、例えば30年経った時に誰もが全力で逃げ出していく事態も十分起こりうるわけです。

お寺の奥さんは「仏教を専門に学ばない人間がどう仏教と向き合うか」という、多くの方のモデルケースに成り得ます。実際にお寺の中にいる人がいざこざやため息ばかりだったとしたら、お坊さんがどれだけ法を語っても説得力は出ませんし。

「生きることは苦である」と説く仏教者には、苦しいことにも逃げずに取り組む生きることのスペシャリストであってほしいと、私はお坊さんの前でよく語っています。

そしてそんな仏教に触れるお寺の奥さんは幸せのスペシャリストとなり、お寺の外にいる方に仏教ってこんないいものなのだと伝える役割を担っていただけたらとほーりーは思っています。

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