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盗難被害から戻ったけど、持ち主が分からなくて返せない仏像一覧

先日、取材に出かけてきた和歌山県立博物館の『和歌山の文化財を守る』展。仏像盗難が多発している問題に目を向けた珍しい企画展ですが、ブログにレポートを書いたらTwitterを中心に多くの方にリツイートされました。

内容を簡単にまとめると、「仏像を盗む人にはバチが当たる」と考えることは、

○防犯対策が仏像のご利益まかせになる
○盗まれた後の検証が鈍くなる
○泥棒の正体を見誤る

の、3点で仏像盗難問題への解決にはならないばかりか、むしろ対策を遅らせる危険思想にすらなるというものです。

さらに和歌山は仏像の盗難が多い地域と言われていますが、その要因として以下のものがあることも紹介しました。

○大阪(仏像が売れる都市部)から近いこと
○高齢化、人口減少により、お堂を守れる人が減っていること
○歴史的に信仰の篤い地域が多く、古い仏像がたくさん残されていたこと

しかしこれは和歌山県だけが特殊なわけではありません。日本各地で頻発しており、これからさらに深刻度を増していく危機と言ってよいでしょう。

盗難被害から戻ってきたけど、持ち主が分からなくて返せない仏像一覧

そして今回はこの企画展の中で盗難被害から取り戻せたものの、もとの持ち主が分からなくて返せずにいる仏像を紹介します。

阿弥陀如来坐像

阿弥陀如来坐像(和歌山県立博物館)

平安時代に創られた像高55.8cmの仏像です。これだけの古像で美しい姿でも、持ち主が現れないとのこと。今でも行方を探しているお寺の方とか、いそうな気がします。

阿弥陀如来坐像

阿弥陀如来坐像(和歌山県立博物館)

像高は34.5cmで見ての通り、とても個性的な姿をされています。一度見たら忘れられないような仏像ですが、この写真を見てピンと来る方はいませんでしょうか?

愛染明王坐像

愛染明王坐像(和歌山県立博物館)

像高は27.7cmと、比較的小柄です。愛染明王としてはスタンダードな姿なので、盗まれる前に写真撮影などしていないと、判別付きづらいかもしれません。和歌山県立博物館の説明では蓮の花や矢、五鈷鈴など、手に持っている持物がいくつか失われており、もしかしたらもともとあった場所に残されている可能性もあるのではとのことです。

弁才天坐像

弁才天(和歌山県立博物館)

腕が取れてしまっていますが、もともと八臂(腕が八本)の弁才天です。像高は26.4cmです。傷んでいますが色彩も残っており、存在感のある台座も印象的です。見覚えのある方がいれば、この写真で思い出すかもしれません。説明によると木の葉や埃が堆積していて、外気にさらされやすい小さなお堂や祠などに安置されていたのではと推測されていました。

天部形立像

天部形立像(和歌山県立博物館)

邪気の上に立つ天部像で、像高43.2cm。腕がないため像名は判別できませんが、四天王または毘沙門天としてお寺に伝えられていた可能性が高いでしょう。大きく外れてしまった右肩から先の部分は、盗まれた時に壊れたのであればもともと安置されていた場所やその近くに放置されたものかもしれません。

弘法大師坐像

弘法大師(和歌山県立博物館)

厨子の中に収められた弘法大師像です。像高は32.5cmで、像内には「高野山大仏師左京/享保十九寅天十月吉日」と記されています。この高野山の仏師・左京の像が盗まれたお寺があれば、安置されていた場所のヒントになります。

弘法大師坐像

弘法大師(和歌山県立博物館)

像高29.5cm。底部に「道春(どうしゅん)/快暹(かいせん)/妙宥(みょうゆう)」という僧侶の名が記されており、位牌や過去帳で寛文5年(1665)以前に関与していた寺院があれば、ぜひお知らせくださいとのことです。

ということで、、、

このブログを見て「うちの仏像だ!」と心当たりのある方が現れ、ぱっと持ち主が判明すればベストですが、さすがにそれは幸運が重ならないと難しいかもしれません。

なので私としては今回まとめたのは、盗まれた仏像を警察などが押収しても、持ち主が分からなくなる事例もありますよということを伝えるためです。

そしてさらに言えばそうしたケースで仏像が持ち主に円滑に戻るために大切なのは、仏像の写真を事前に撮影しておくことだと思うんですよね。

秘仏などは簡単にはいかないかもしれませんが、それでも万が一のことがあってからでは遅い話です。今回、お話を聞かせて頂いた和歌山県立博物館の主査学芸員・大河内智之さんも、「仏像を守るための撮影は信仰とも矛盾せず、むしろ大切なことではないか」と仰られていました。

「うちの仏像が盗まれるはずがない」なんて考えていると、いざという時に取り返しがつかなくなります。こうした盗まれた仏像のリアルな写真を見て、うちも備えておかなければと少しでも思って頂けるようでしたら幸いです。

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阿弥陀如来坐像(和歌山県立博物館)

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